石門心学風土記 第42回 山城の国 半兵衛麩
- 大和商業研究所
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十一代目が著述『あんなぁ よおぅききや』
「お父さん、闇の麩作ったら、なんであかんの?」
「あんなぁ よおぅききや。悪い事しても、誰も見てへんと思うたらあかんぇ。
ここで闇の麩屋をしたら、ご先祖さんに申し訳が立たん。そんな闇で作った麩がかわいそうや。うちは代々真面目な麩屋でずっと通してきたし、これからも真面目な麩屋通さなあかんのや。お客様に買うていただける、有難味のわからんような闇の商売を、若い者が覚えたらあかん。貧乏のつらさを頭の中にしっかり覚えておく方がええ。かわいそうやけど、辛抱おし。」
半兵衛麩~韓国KBSの番組で知る~
私が同社を知ったのは、KBS(韓国放送公社)が二〇〇七年に作成の「シリーズ二五〇〇年儒教の旅」であった。それは儒教精神が世界の経済界でどのように生かされているかを各地で丹念に取材した力作で、NHK・BSが日本語に翻訳して放映した。その中で、儒教の影響を受けた石田梅岩の思想が日本の経済成長に寄与したとした上で、「半兵衛麩」を次のように紹介している。
十一代目玉置半兵衛会長は、「原料を精選し、伝統の技で製造された高品質な商品を、丁寧な接客で販売することにより、固定客が増え栄える」と従業員に日々語り続ける。この精神は二七〇年前に経営理念とした石田梅岩の教え「先義後利(せんぎこうり)」を守り、時代の変遷にもかかわらず代々、誠心誠意の経営を続けてきたことによる。
清水五条駅前で三百余年「先義後利」
同社は、元禄二年(一六八九年)に天皇家の料理人が創業。三代目が石田梅岩先生の高弟・杉浦止斎に入門した。
私は、二〇〇九年、玉置半兵衛会長に取材し、『季刊イズミヤ総研』に「元禄創業の半兵衛麩~伝承される石門心学精神と進取の気概~」を寄稿した。その後、度々店舗を訪問。心学明誠舎などで講演を頂き、各所でご指導を賜った。会長は二〇二二年四月ご逝去。享年八七歳。
現在は、十二代目玉置剛社長の元、京阪電鉄・清水五条駅前で盛業中である。この場所は、石田梅岩先生ほか門弟十八名プラス一舎の鳥辺山に墓参する際に乗降する駅であり、いわば門前に当たる地である。門人一同、石門心学の守り神としてあがめ、行く末の弥栄を祈っている。
お客様への奉仕をモットーに販売・製造を中心に、カフェ・茶房・弁当博物館などを併設している。どうぞお立ち寄りください。
写真は『あんなぁ よおぅききや』(玉置半兵衛著、京都新聞出版センター、二〇〇三年発行)

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