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  • 執筆者の写真大和商業研究所

心学風土記 美濃の国 冨圓舎、会友舎

熊谷康二氏の成形の功徳~心学二舎の遺産~

今から十年以上前になるが、石門心学会の石川松太郎先生から古書を復刻した『圓治と東洲之石心参禅蔵』(2006年10月刊)が送られてきた。熊谷康二氏の労作である。

 同書の前書きには、「御挨拶」として「明治元年多治見に於いて富圓舎(ふえんしゃ)が西浦圓治によって設立されました。同じ年、土岐妻木にて会友舎が熊谷東洲(くまがいとうしゅう)によって設立。両舎共、石門心学江戸派参前舎の流れを継いでいました。(中略)心学講舎に就いては十七年程も続きましたがその足跡は現在何も不明、どのような企画運営をしたか、資料等を探しています」とある。

同書には以下の古書の復刻版だ。心学問答集五十則、孝の道、養生和訓、時辰儀説、会友舎遠慮講、白隠和尚施行歌、白隠坐禅和讃など。

それから数年を経た2015年7月、同書を縁(えにし)として、多治見市の「石心参禅蔵」を訪ねる機会を得、熊谷氏に出逢えた。ここは土蔵三棟を改造した資料館で、心学を体験する参禅室もある。火木土日、10~16時開館。入館料300円(記念品付き)、多治見市御幸町3-11、連絡先090-1740-5062(熊谷康二氏)訪問をお勧めします。

明治期の心学を担った熊谷東洲と西浦家

この地は多治見市の旧市街地にあり、隣は明治天皇の行在所となった西浦庭園で、かつては西浦家の離れ座敷であった。石心参禅蔵は西浦家の土蔵内で石門心学を紹介し、西浦家の扱っていた陶磁器、江戸後期から明治にかけての書画が展示されている。三條実美、西郷隆盛、勝海舟、山岡鉄舟らの書が所狭しと飾られている。

西浦家は多治見の大庄屋で江戸・大坂に出店する東濃一の陶磁器の仲買商であった。また、熊谷家も土岐で庄屋を務めた。その熊谷家を継ぐ康二氏は、江戸・参前舎・第八代舎主を務めた熊谷東洲の子孫である。東洲は若くして江戸に出て心学を学び、参前舎の中心人物となる。また西浦家江戸店の支配人となり、心学の経営哲学を商才に活かした。

参前舎の歴代舎主は次の通り。○内数字は代数。①中澤道二、②植松自謙と大島有隣が年番舎主、③中沢道輔、④竹田道跡、⑤中村徳水、⑥平野橘翁、⑦高橋好雪、⑧熊谷東洲、⑨長沼潭月、⑪早野柏蔭、⑫山田敬斎、⑬伊豆山格堂、⑭田辺肥州、⑮小山止敬。

なお熊谷康二氏は八六才。お元気に当館を守っているが後継を懸念されておられる。2019年11月2日(土)の「石田梅岩先生開講二百九十周年記念講演会」に参加されるので、再会が楽しみだ。

写真は、正面に山岡鉄舟の「忠・孝・仁」と熊谷東洲の遺訓が掛けられている。

〔参考〕『たじみ』Vol.17(2008年3月発行)


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