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石門心学風土記 丹波の国 第29回 傳習舎

京都以外で最も早く設立された傳習舎

傳習舎は丹波国氷上郡黒井(現丹波市春日町)に在った。春日局(徳川家光乳母)はここの出で興禅寺(後述)が出生地と伝えられる。

丹波と京都は隣国であり、心学の教えがいち早く伝わった。『諸国舎号』では六番目に傳習舎が載る。五番までが京都市内であり、圏外で設立された初めての講舎である。天明三年頃、谷川物外(もつがい、一七三二~一八一〇)が創始した。興禅寺に『谷川物外先生』碑があるという程度の情報しか、文献では得られてはいなかった。

 そんな折り、昨年六月に、知人の紹介により、山口晋氏という郷土史家の方から傳習舎、谷川物外に関する詳細な調査内容の手紙・資料が届き驚愕した。以後、通信で詳細情報が得られ、現地訪問にて、友人の片山公造氏と共に関係各所をご案内頂いた。

郷土史家・山口晋氏が伝える谷川物外の訓え

 山口氏の偉業は、何と言っても今まで誰も紐解かなかった物外の著書『天明いろは歌』『袖珍心学箴(しゅうちんしんがくしん)』 『五常俗談集』『問答・仙鳥真聲(しんせい)』などを入手し、原文の解読、現代語訳、解説を行ったことである。『天明いろは歌』は物外と地域の娘の道歌集で、当時の子女教育の水準が伺える。『袖珍心学箴』は梅岩・堵庵・四書などからの引用が多く、山口氏が「ポケット版心学の戒め」と名付けている石門心学の重要な解説書だ。『五常俗談集』は物外の還暦に出版され、思想の集大成ともいえる書。『問答・仙鳥真聲』は禅的な問答を扱った高度な内容のもの。

 物外は商家当主で、門人が四千人と、指導者として超破格の人物である。傳習舎の開講には手島堵庵・中澤道二も祝いに訪れている。また支援者に細見源蔵、門弟に田村祐之進がいた。

 上記の書は地方の偉人伝として貴重な内容であるとともに、心学研究家にとってまだ世に顕れていない待望の書といえよう。全体が出版物となれば、心学史上における物外の実績に光が当たることになろう。

 昨今の政治・経済・社会は多くの課題を抱えており、新時代「令和」における再生が不可欠である。山口晋氏による傳習舎・谷川物外の教化・修養の実情発掘は、現代の社会教育に示唆を与えてくれている。

 私としても山口氏より力を頂き、心学が目指す徳力の向上、永続的繁栄の実現のためにも、今後共、各地と連係を図り、弘布活動に力を注ぎたい。頂いた史料・情報に深謝を表します。

 写真は、興禅寺山門(兵庫県丹波市)にて。右から、山口晋様、片山公造様(以上郷土史家)、興禅寺・森野大乗住職、清水正博、清水伸子。



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