森信三先生は、天王寺師範時代の昭和10年頃、読書会(斯道会)のテキストに『石田先生事蹟』を用い、その「解題」に次のように書いています。「一人の偉人の言行を録すること、この書の如く具(つぶ)さにして、しかも心いたれるものは容易に他に見るを得ないのである。」
森先生のロングセラー『修身教授録』(致知出版社)は戦前の師範学校生向けの講話録ですが、今なお多くの読者に支えられ、全国で読書会が開催されています。その中の第28講「一人一研究」では梅岩先生を取り上げ「当時封建の世のために、武士以外の者は、学問による教えの光を浴びなかった、一般庶民階級の子弟を憐れまれた梅岩先生の大慈悲から生まれたもの」で、「その真の精神内容を研究する人は絶無といってよい」「(皆さんは)一躍直ちにその内面界に飛び込んで、永遠に生きている生命をつかみ、現代の形態にまで展開してほしい」と同師範生に期待を込めて語っています。
倹約と知心を貫く
森先生は古今東西の哲学を融合して、独自の「全一学(ぜんいつがく)」を提唱すると共に、挨拶、掃除、履物を揃える、腰骨を立てる、「時を守り、場を清め、礼を正す」など平易な言葉で人の道を説いており、まさに現代の梅岩先生ともいえましょう。
全一学は世界観と人生観をいかに統一するかにあり、その中心である「いのちの自証」は天から与えられた使命をどのように果たすかということです。これはまさしく、梅岩先生の心を知ることと同様です。
(写真は、(社)実践人の家全国大会にて森信三パネル前にて)
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